一般社団法人泥土リサイクル協会

固化材

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固化材の種類

安定処理のための固化材としては、セメント、石灰等のほかに、これらを母材としたセメント系固化材および石灰系固化材がある。さらに、両者の機能を合わせたセメント・石灰複合系固化材もある。また、最近では石膏を母材とした固化材や建設副産物を再生利用したリサイクル型の固化材もある。主な固化材の分類を下図に示す。

これらの固化材の固化特性はその種類や建設汚泥の土質特性により大きく異なるため、要求品質に適合するにはその固化特性に留意しなければならない。各種固化材の固化特性を以下に示す。

セメントおよびセメント系固化材

安定処理用のセメントとしては、普通セメント、高炉セメントが多く用いられる。これらセメントを固化材として用いる場合の対象土質は砂質土が主であり、高含水泥状物、高有機質土等の特殊土にはセメント系固化材が用いられる。
セメント系固化材には、一般軟弱土用のほか、高含水有機質土用、下水汚泥用、ヘドロ用等があり、高アルミナ質の特殊なクリンカーの使用、成分・粒度の調整、反応促進剤の添加等により、セメント水和物、特にエトリンガイトの生成を促進し、種々の軟弱土を効率良く安定化するものである。このため、軟弱土に添加した場合にも大きな強度が得られ、普通セメント等では安定化が困難な特殊土への適用が可能である。また、近年、改良後短時間(数十分~数時間)で安定処理することを目的とした速硬性セメント系固化材や散布、混合・攪拌時の粉塵の発生を抑えた、発じん抑制型セメント系固化材等が開発されている。
また、セメント系固化材の使用に際して、国土交通省が通知した「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び改良土の再利用に関する当面の措置について」に準拠して、六価クロムの溶出に留意しなければならない。

石灰および石灰系固化材

安定処理に使用される石灰としては、生石灰および消石灰がある。一般には生石灰がよく使用され、対象土は粘性土が主である。高含水比泥状物、高有機質土等の特殊土に使用されることは少ない。
この他に、セメント系固化材と同様に、各種の添加材を加えた石灰系固化材がある。これらはいずれも石灰が有する土質安定処理効果4)に加えて、エトリンガイト等の生成を促進することにより特殊土への適用性を高めたもので、対象土質によって各種の製品がある。さらに、粉じんの発生を抑えた、発じん抑制型石灰系固化材も開発されている。

石膏系固化材

石膏粉固化材は、気硬性石膏中の半水石膏が二水石膏に変化して中性領域で固化するため、対象土が中性であれば処理土も中性である。また、固化反応が早く数10分で反応が終了するため泥土を短時間で処理することができる。その特性から処理土は、土地造成などの埋め戻しとして再利用されるほか植生土壌として使用することができる。しかし、石膏単体の固化材で改良した改良土は、一般的にその強度は低いほか、水にさらされた場合、再泥化するため留意する必要がある。近年、石膏系固化材の強度を改良した、弱アルカリ系の固化材が開発されている。これはスラグ等を用い弱アルカリ性にすることでポゾラン反応により強度が増加させ、石膏のpH緩術作用によりpHは速やかに中性領域に低下する。
なお、セメント系や石灰系の固化材にも石膏は副材料として混練されているが、ここで説明した固化材の区分は主材料を指すものである。

リサイクル型固化材

最近では、循環型社会形成の観点からその利用が求められている各種焼却灰(石炭灰や製紙スラッジ焼却灰等)や廃石膏ボードを利用した固化材の開発が進められている。
リサイクル型固化材について以下に示す。

  • 石炭灰系リサイクル固化材
    石炭灰(フライアッシュ)は、それ自体水硬性を持たないが、セメントを混入して使用すると、セメントの水和過程で生じる水酸化カルシウムと徐々に反応して安定なケイ酸カルシウム等の化合物を作るポゾラン反応を示すため、長期にわたり強度が増加し、水密性や耐久性が向上することが知られている。
  • 製紙スラッジ焼却灰系リサイクル固化材
    紙パルプ製造過程で排出される製紙スラッジ(製紙粕)は、焼却により製紙スラッジ焼却灰として安定化・減量化され、一部はセメント材料として有効利用されているが、残りは埋立処理されてきた。しかしながら、適地の不足や環境保全等によって、新たな処分場の確保は困難な状況にある。また、資源の有効利用や環境保全に資するため、資源のリサイクルを推進することが必須となっている。
    製紙スラッジ焼却灰は非常に軽く、嵩高で吸水性が高いという特徴を持っており、その特性を利用した固化材が開発されている。
  • 廃石膏ボードリサイクル固化材
    近年、廃石膏ボードの処分が大きな社会問題となっており、その再資源化技術が開発されている。この廃棄された石膏ボードを紙と石膏に分離したうえで、石膏のみを粉末化して130~150℃程度で熱処理すると半水石膏(焼石膏)になる。この半水石膏が適量の水と混合すると化学反応が起こり硬化するという特性を利用した固化材の開発が進められている。
    石膏は中性であり、従来利用されてきた強アルカリ性のセメント系固化材や石灰に比べ環境面において優しい材料となる。しかしながら、硫化水素の発生や原材料に混入しているフッ素の含有等の問題5)があり、その検証を行うことが必要である。

耐有機性固化材の適合性

セメントによる固化は、多くの土質に対して適用できるが、対象土がフミン酸あるいはフルボ酸などの有機物を多く含む場合には、水和反応が阻害されるため、セメントや消石灰では改良効果が小さいといわれているが、耐有機性固化材としてのセメント系固化材は、比較的大きな強度発現が期待できる。
一般に、土と石灰の反応においてはポゾラン反応が強度発現の主体であるのに対し、土とセメントの反応では強度発現に寄与するポゾラン反応の役割が比較的小さく、セメントの水和反応ならびに水和生成物による接着作用が強度発現に最も大きな比重を占めていると考えられる。
普通ポルトランドセメントあるいは高炉セメントと比較して、最も特徴的なセメント系固化材の化学組成としては、多量の三酸化硫黄(SO3)を含有していることである。SO3は半水石膏(Ca SO4・0.5H2O)あるいは二水石膏(Ca SO4・2H2O)の形で含まれている。石膏により多量の水と結合した鉱物を生成する。
よって改良材選定に際しては、改良対象土の腐食酸量などや改良材のCaO含有率・SO3含有率・SAC含有率・セメント係数など、さまざまな指標を使って配合試験前の段階で効率的に行うことが重要である。

  • 高有機質土※の場合は、CaOが55%以下、SO3が6%以上の固化材が高強度を示す。
  • 原則としてSO3が10%以上で、CaOが57%以下またはSAC含有比率が0.29以上を満足する固化材を使用するのが適当である。
  • 腐植酸量とフルボ酸量により、SAC含有比率およびセメント係数を考慮した改良材の選定ができる。

ここでいうSAC含有比率、セメント係数の定義は以下の通りである。
SAC含有比率=(SO3+Al2O3)/CaO)
セメント係数=比表面積/比重

[高有機質土の定義]※

従来、高有機質土(泥炭)、火山灰質粘性土(関東ローム)、まさ土およびしらすが特殊土として取り扱われてきた。
農業土壌学の分野では、ドイツの区分に基づいて有機物含有量が50%以上のものを泥炭、20~50%のものを亜泥炭と呼んでいたが、最近では20%以上のものを泥炭と呼ぶ傾向にある。
地理学的な観点では、粘土のような鉱物質や火山噴出物などがほとんど混入しないもののみに泥炭という用語を当てている。土粒子などが混入するが、有機物含有量が50%以上のものについては、粘土質泥炭、砂質泥炭、火山灰まじり泥炭などと呼び、有機物含有量が50%以下の場合には、泥炭質粘土、有機質粘土、植物まじり粘土などと呼んでいる。
土質工学標準用語集では、高有機質土を「多量の有機物を含む土」、泥炭を「低湿地に生育した植物が低温で嫌気性の環境下に堆積してできた高有機質土」、黒炭を「高有機質土の中で嫌気性の分解が進んだ黒色土」と定義している。
以上のように高有機質土および泥炭の定義や説明は分野によって様々であるが、従来の経験や農業土壌学の例にならって、20%以上の有機物を含んだ土を高有機質土あるいは泥炭といったほうが一般的である。
また、泥炭は有機物の蓄積性が高く、重量に対して10~30倍の水分を保持できるため土壌改良資材として利用できるが、酸性を示すためpHを6~7程度に調整する必要がある。

その他

安定処理とは異なるが高含水建設汚泥の塑性化による早期場外搬出のために高分子系の土質改良剤を用いる場合がある。高分子系の土質改良剤の効果7)は混合後ごく短時間(30秒~1分)で得られるが、その強度は低いため、近年ではこれと固化材を併用した処理方法が多数開発されている。

 
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